第6章 ピンチは続くよどこまでも?
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「…わかった。い、一回だけ…な?」
「ホント!?嬉しい、ありがとう…じゃあ朔ちゃん、こっち向いて?」
廊下側の壁際にしゃがみ込んだままで、俺はくるりとあおの方に向きを変えた。
目の前のあおと絡まる視線に釘付けになる。
穏やかでいてその中に強さを感じるGlare…
「……朔ちゃん、Come(カム/おいで)」
そう言って伸ばされた腕の中。
俺はCommandに抗うことなく飛び込み、その拍子にあおは俺を抱え込んだまま床に尻もちをついた。
「あおっ、大丈夫か」
「っ、ふふっ、朔ちゃん可愛い…っ」
そう言って俺の頬に触れたあおの手にドキッとする。
「あお……」
「朔ちゃん……Kiss(キスして)」
…たぶんそのCommandがなくてもそうしていただろう。
俺はあおの瞳に吸い込まれるようにして自ら唇を重ねていた。
数回優しく唇を食(は)んだあと、一瞬見つめ合って深くキスを交わす。
俺の後頭部にあおの手が添えられて、遠慮がちに唇の隙間から入り込んできた舌。
まだたどたどしいあおのキスが可愛くて。
俺はその舌を掬って絡ませる。
「っ、ふっ、ん…っ」
どちらからともなく洩れる吐息と上がり始める水音。
しばらくふたりでキスに溺れていた。
「っ、はっ、はぁっ、はぁ…っ」
ようやく離れた唇。
名残惜しそうにあおの瞳が俺を見つめる。
「朔…ちゃ…っ、ヤバ…っ」
ヤバいのは俺も同じだ。
さっきまでの気怠さがスッと消え去って、嘘みたいに身体が軽い。
「なに…これ?身体がすごく軽いし気分も…朔ちゃん…も?」
「ん…きちんとしたPlayが成立したってことだろうな」
あおなら、俺だけのDomに…
いやさすがにダメだよな…