第6章 ピンチは続くよどこまでも?
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「っ、朔ちゃん、やっぱり俺だけのSubになってよ」
「だ、だから何度も言ってるけど、おまえは生徒で俺は先生…」
「じゃあ朔ちゃんが臨時教員の期間が終わったらでいいから!それなら俺の先生じゃなくなる…でしょ?」
……なるほど。
俺がこの学校の臨時教員としての期間が終われば、ただの幼なじみとしての関係だ。
「ね?あと半月くらいなら我慢するから、それならいいでしょ?」
「……考えとく」
「マジで!?ヤバ、めっちゃ嬉しい!」
「ばっ、まだ考えとくって言っただけだからな」
「ダメって言われなかっただけでも超進歩だよっ♪」
なかなか前向思考なヤツ。
確かに臨時教員期間が終われば、そんな関係になったとしても…
「ん、スマホ…」
鈍く響く振動音に気付き、俺はポケットのスマホを取り出し画面をタップする。
「…あお、我慢は半月じゃ足りないかもしれないぞ?」
スマホに届いていたのは教頭からのメール。
「どうやら○△先生の入院が伸びたらしい。臨時教員の延長をお願いしたいので、まだ校内にいれば職員室に戻ってこいだって」
「ま、マジ!?さ、朔ちゃんそれ受けるの?」
「ん…まあそうだな…ふふっ、残念ながらもうしばらく俺の生徒だな」
俺たちの関係が進展するのは、まだ先のことになりそうだ。
「そんなぁ…」
すっかり軽くなった身体を起こして立ち上がると、ショボくれているあおと一緒に隠れていた教室を後にした。
「ところでさ、おまえ、なんで俺の電話番号知ってんだ?」
「どうしても朔ちゃんに連絡取りたかったから、朔ちゃんの実家におしかけたんだけど、朔ちゃんいなかったからお母さんに聞いた♪︎」
「……おまえの執念こわっ」
「それだけ朔ちゃんのこと想ってるってことだよ。てか、いつまで我慢すればいいんだよ~っ」
残念がるあおが可笑しくて思わず笑ってしまう。
俺の全部をあおになら支配されてもいい──
少しだけ、ほんの少しだけそう思ったことは、まだ内緒にしておこう。