第6章 ピンチは続くよどこまでも?
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あおに支えられながら保健室を後にする。
「朔ちゃんっ、朔ちゃん?大丈夫?」
「っ、だ、大丈夫だから…」
俺を支えてくれているあおから離れて、なんとか一人で帰ろうと一歩踏み出した。
「あっ、危ないっ」
黒崎先生に浴びたGlareのせいで、いまだ身体にしっかり力が入らずによろけた俺を再びあおが支えてくれて。
「朔ちゃん、無理だって」
「大丈夫だから、おまえは帰っていいから…」
「……そんなに俺、頼りない?」
「え…?」
あおの熱いけど寂しそうな、それでいて俺を本当に心配している瞳がじっと見据える。
「違…っ、これは俺の問題で…」
「朔ちゃんの問題?」
俺の意思で黒崎先生に会いに行って、こんなことになって…自分の考えの甘さと危機感のなさに呆れる。
そのうえ、昨日一瞬でも黒崎先生となら…なんて思ってしまった俺があおに頼る資格なんて…
「…おまえは俺より年下で生徒で…迷惑かけるにはいかな…うわっ」
言い終わらないうちにあおが前と同じように俺を抱き上げた。
「や、やめ…っ」
「朔ちゃんのバカっ!そんなの関係ないし、迷惑かどうかは俺が決めることだし」
見上げるあおは少し怒ったような表情(かお)をしたまま、ずかずかと歩きだす。
「ちょ、あ、あおっ」
俺は落ちないようにあおにしがみつくしかなかった。
しばらく行って廊下の角を曲がった所で止まり、あおが俺の顔を覗き込む。
ち、近いっ、あおの顔が俺のすぐ上に…
「…ねえお願い…俺に、朔ちゃんのこと守らせてよ…」
あおの瞳が優しい光を放つ。
黒崎先生とは違う穏やかで優しいGlare…
「あお……」
俺はその瞳に吸い込まれるようにして、気が付けばあおの唇を塞いでいた。