第6章 ピンチは続くよどこまでも?
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「その表情(かお)、やっぱりそそられますね…高山蒼斗もそうやって誘惑したんですか」
「ちが…っ」
あおは俺から誘ったこともないし、Glareを使って無理矢理に俺を従わせようとしたこともない。
あおは…昔からずっと俺のことを、ただまっすぐに好きでいてくれただけなんだ…
「っ、黒崎先生っ、お互いの信頼関係のないPlayでは何も解決しないんです、だから…っ」
「それでもその場しのぎにはなる。僕は諦めが悪い男なんでね…吉野先生、次はどんなCommandが喜んでくれるかな」
ニヤリと口角を上げる黒崎先生の瞳から強めのGlareが放たれる。
このままこのGlareを浴び続ければ、俺はSub drop(サブドロップ)を起こしてしまうかも知れない…
「…あお……っ」
俺は無意識にあおの名前を口にしていた。
その時、保健室の扉をドンドンと叩く音が響く。
「朔ちゃんっ、ここに居るっ!?」
その声は、今聞きたくて仕方なかった声。
「朔ちゃん?朔ちゃんっ!?」
俺の名前を呼ぶその声に、強張る身体の緊張が少しずつ緩んでいく。
「残念。お迎えが来たようですね」
軽く舌打ちをしてそう言うと、黒崎先生は扉を開けた。
「高山君、なにか?」
「朔ちゃん、いや、吉野先生は…」
覗き込んだあおと黒崎先生越しに視線がぶつかる。
「朔ちゃんっ!」
すぐにあおが俺の側に駆け寄った。
「吉野先生は体調が悪そうで、今、少しふらついてしまって…」
あおがキッと黒崎先生に鋭い目線を向ける。
「朔ちゃんは俺が送って行くんで!朔ちゃん、立てる?」
そう言って俺を抱え起こすあおの腕にしっかりとしがみついた。
「ふふ…吉野先生、お大事に」
保健室を後にする俺の背中に黒崎先生の声が聞こえた。