第5章 ピンチ…かもしれない。
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「ば、バカなこと言うなって、無理だって」
「なんで?朔ちゃんもしかして、今コイビトとかいるの?」
「『とか』ってなんだよ」
そりゃ前は自分の体調保つためにそういうサイトで相手を見つけて、数回関係を持ったこともある。
だけど今はSubの本能を抑えるための良い薬もあるから、そこまで大変なことにはならないし。
それになにより、信頼関係のないPlayは何も解決にはならないし、自分がきついだけだから…
「…朔ちゃんやっぱりコイビトとかいるんだ」
「いないって、てか『とか』はやめろ」
俺がそう言うと、あおは『ごめん』と微笑う。
「じゃあいいじゃん、俺のコイビトになってくれても」
「だから前にも言ったけど、あおはまだ学生だろ」
「学生じゃなかったら考えてくれるってこと?」
まさか『学校辞める』とか言い出すんじゃないだろうな…
「おまえ…『じゃあ学校辞める』とか言うなよ?」
「そう言いたいとこだけど、もし俺がそんなことしたら朔ちゃんが責任感じちゃうでしょ?」
意外と話の解るヤツで良かったと胸を撫で下ろす。
「俺は別に朔ちゃんのこと困らせたいワケじゃないんだ。ただ俺のことだけを見て欲しいだけ……」
あおの瞳が俺を捉える。
ヤバい、と一瞬怯(ひる)んだ隙にあおの顔が俺に近づいた。
「っ、な、なにす…っ」
唇が触れるか触れないかのすんでのところで、俺は身体を反らしてあおとの距離を取った。
「あっ、残念!もうちょっとだったのに」
「おまっ、校内でそんなことするなっていっただろっ」
「え、じゃあ校内じゃなかったらいいんだ」
「だからそういうことじゃなくて…」
結局、課題そっちのけで二人で押し問答。
そんな最中(さなか)、俺たちしかいなかった教室に誰か入ってきていたなんて気づかなくて。
「あの、イチャイチャされてるところ申し訳ないんですが…」
そう声をかけられてビクッと身体を震わせる。