第4章 保健室の告白。
8)
「あ、あおはその…彼女…とか、いないのか?」
沈黙に耐えられなくなった俺は、思わずそんな変な事を口走ってしまう。
「…なに?気になるの?」
「いや…久しぶりに会ったらすっかり身長も伸びてカッコ良くなってるしさ、普通にモテるだろうな~…って」
うつむいていた顔を上げるとあおの瞳と目が合って、またピクッと身体が強張る。
「……そういう朔ちゃんはどうなの?」
「お、俺は…教えない」
今まで付き合ったことがあるのは数えるほどしかなくて、俺だけのDomを見つけられず体調を崩して地元に戻って来た……なんて言えるかよ。
「ふはっ、朔ちゃんズルいなぁ…俺は今も、今までも恋人とかいたことないし」
「ふぅ…ん」
「でも、ずっと好きなひとはいるよ、ずっとずっと…」
そう話すあおの瞳はとても優しい。
「そっか…でもそんなに想われてたら、その子も幸せだろうな」
「そうだといいけど」
「…その…余計なお世話かも知れないけど、その子に想いは伝えないのか?」
「……はい、これでおっけ」
ぽん、と腕に触れられて見やったそこにはきれいにガーゼがあてられていた。
「あ、ありがとう」
「…ねえ朔ちゃん、朔ちゃんは誰かにそんなに想われてたら幸せ?嬉しいと思う?」
処置に使った道具を片付けながら、あおが俺にそう聞いてくる。
「え、うんまあ幸せかな…だって長い間俺のことばっか考えてくれてたってことだもんな」
「そっかな…ぁ」
「そうだと思うよ。ちょっとだけ勇気だしてみたら?」
幼なじみとはいえ、教え子(まだ初日だけどw)の悩みと真摯に向き合って導いてやるのも教師の仕事だ。
「そうだよね…久しぶりに会えたんだし、このチャンスを逃す手はないよね」
「そうだそうだ、チャンスを逃す……ん?久しぶり…?」
「それに本人が幸せだって言ってるし、俺…ちょっとだけ勇気出してみようかな」
片付けを終えたあおが、俺にじりじりと近寄ってくる。
「ま、待てまてっ、お、おまえかずっと好きな子って……」
目の前で嬉しそうに微笑うあおが俺を指差した。
「ずっとずっと『好き』って伝えたかった…朔ちゃん」
…ぇ、ええ~っ?!