第4章 保健室の告白。
7)
「クロせんせー、居る?」
あおは俺を抱えたまま保健室まで運び、ドアを開けた。
「ちょ、下ろせって、自分で歩けるっ」
俺の主張は無視られて、そのままズカズカと保健室の中まで連れて入られる。
「あれ?保健の黒崎先生いないな…」
辺りをキョロキョロと見渡して保健の教員がいないことがわかったあおは、ようやく俺を壁際の長椅子の上へと下ろした。
「ったく、保健室まで誰にも会わなかったから良かったけど…」
いい大人が、ましてや教師が生徒に抱き抱えられ運ばれている姿なんて誰かに見られたらたまったもんじゃない。
「ま、いっか。ほら朔ちゃん腕見せて」
「ちょ、人の話を聞けって、大丈夫だって…」
そう言って見上げたあおの瞳と目が合った瞬間、その瞳(め)の光に充てられて身体が強張る。
Glare(グレア)…っ、コイツもしかしてDom…
「ほら、血出てんじゃん」
勝手に俺の腕を取って、勝手にその辺のものを使ってなにやら消毒を始めたあお。
「っ、か、勝手に使っていいのかよ」
「大丈夫だって。俺小学生のころ保健委員だったし」
いや、根本的に答えが間違ってるから。
「…あとで怒られても知らないよ」
「いいよ、朔ちゃんがケガしてる方が俺、嫌だもん」
そう言って嬉しそうに処置をしてくれるあおに、俺はしばらく黙ってじっとしていることにした。