第61章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車最終章 夏油傑
「夏油先輩は優しいです。さっきのキス…驚いちゃったけど嬉しかったです…」
素直に言葉にすると唇を触れる指がとまる。
「あんな乱暴にしたのにかい?」
「…夏油先輩だから」
大好きな先輩だから少し強引にされたって嫌じゃない。
むしろ体は喜んで興奮してしまったし、今だって激しいキスを思い出して熱がおさまらない。
「なまえが乱暴なセックスが好きならそうするよ。君のためなら何にだってなれる」
「それはそれでちょっと心配ですね…」
「ふふっ、そうかい?好きな人に尽くしたいと思うのは本望なんだけれど」
確かに夏油先輩は大袈裟に言ってしまうと尽くすのが生きがいのタイプに思える。
むしろ尽くさないと落ち着かない気持ちにさせてしまうのではないかと想像ができるし、わたし自身が愛されたい生き物だから普段から居心地がいいのは自覚している。
「あの、ずっと謝れなかったんですけど、最初に先輩を指名しておいて結局いろんな人とシたりしちゃって本当にすみませんでした。先輩は割り切るって言ってくれたけど、どう考えてもわたしが踏ん切りがつかない態度だったからああいうふしだらな事態を招いてしまって…」
「いいんだよ。嫉妬はしたけど怒ってはない。まあ一人を除いてはだが…」
夏油先輩は悔いるように空白を置く。
わたしの軽率な行動が招いたことなのに、責任感の強い先輩だから未だに自分のせいだと思い込んでいるのかもしれない。