第61章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車最終章 夏油傑
逃げられそうにない引き締まった体。
大きな躯体に閉じ込められて、舌入りの熱いキスに頭の中までぐちゃぐちゃに掻き回されていく。
「ぁ、ふぅっ!ンぅ、はっ、せんっ…ふぁ…っ…」
感じたことのない男らしいキス。
何も言わず、いきなり求められる情熱的なキスに心臓が飛び出しそうになる。
「ん、…はぁ、んぅ…」
息が苦しくなってきたところで緩急をつけ、ゆっくりと濡れた唇が離れていく。
「…はぁ、はぁ、…すまない」
ぷつん、と透明ないやらしい糸が切れてもなお、夏油先輩は熱がこもった目で唇を見つめてくる。
「嬉しすぎて、今すぐ君に触れたかった…」
感情が高ぶった夏油先輩を見たのはこれで二度目だ。
一度目は直哉くんを殴った時。
アレはほんの一瞬だったからほとんど獰猛さは感じられなかった。
それ以外、夏油先輩はムカつくことを言われても仏のような顔をしているし、例外の五条先輩との痴話喧嘩は気付いたら元通りになっているからその比じゃない。
「少し強く吸いついてしまったね。口元が赤くなってしまった…」
優しい手つきで唇を撫でてくる。
滅多に見られないかもしれない欲情を露わにしている表情に見惚れていると、夏油先輩は眉毛を八の字にする。
「そんなに見つめないでくれよ。私も男だってよく分かったろ…?」