第61章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車最終章 夏油傑
想いは本物なのにとても消えかかりそうな告白になってしまう。
「なまえの気持ちしっかり届いたよ」
車両のレールの音が霞むくらい夏油先輩の声がハッキリと聞こえた。
顔を上げると膝をついた夏油先輩がわたしの両手を優しく包み込んでくれる。
「ありがとう。とても嬉しいよ」
嬉しすぎて涙が止まった。
けれども頭の中で繰り返すうちにまた涙が溢れてきた。
「っ、先輩…っ」
お礼を言ってくるあたり夏油先輩らしい。
夏油先輩には迷惑や心配ばかりかけていたから謝らなきゃならないことが沢山ある。
けれど、ここで全部吐き出してしまったら他の人を傷付けることになるかもしれない。
すると夏油先輩がスッと手のひらを出してくれた。
「向こうで話そう。私達は恋人同士、遠慮なく二人きりになれるんだ」
ニコッと笑い、夏油先輩はわたしの手を引いて立ち上がらせる。
下心ありきな言葉もなんだか嬉しくて、一両目から三両目の浴室に移動したのも束の間、貪るようなキスをしてきた。
「んんんっ…!ふぁっ…ンぅ」
急に襲われるとは思わず、驚いて夏油先輩の胸板に向かって力をこめる。