第60章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車最終章 五条悟
自分の身を守るとはいえ、客観的に見るとかなり冷たいことをしていたと気が付く。
「はい…、しっかり覚えてます。七海くんも無事ですよ。先輩達も大丈夫ですか?」
『俺らは平気。お前ら、ディ〇ニーランドにいるんだろ?』
そうです、と答えると向こうから「二名様ご案内です」とハキハキした女性の声が聞こえる。
『何時頃までそっちにいんの?夕飯もそっちで食うなら…』
まだ日は明るい。
「会いたい、です…」
素直な言葉がスッと降りてくると、電話越しの五条先輩がふと優しく微笑んだ気がする。
『上等。ならすぐ迎えに行くよ。…傑悪い。二杯分食っといてー』
人としてどこか超越している先輩達は任務を引き受けることに抵抗がなく、確実に誰よりも過度に働きすぎている。
同じ学生の身分なのに二人は最強の姿勢を崩さず、周りもそう扱うから自然とわたしもそれに同調してしまう。
だけど今日だけは、今日だけは恋人との甘い時間が許される気がして「会いたい」と贅沢で罪なおねがいを口にする。
「二人ともごめんねっ!五条先輩に会いに行ってくる!」
「え?五条先輩に…?」
「灰原。事情は私から説明します。あの人を待たせるとうるさいので行ってきてください」
この場に七海くんがいてくれて良かった。
灰原くんには人づてで申し訳ないが七海くんにすべてを託し、園外で待っているとタクシーに乗った五条先輩がやって来た。
つい数時間前までサングラスのない顔ばかり見ていたから違和感がある。