第57章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-漆-
「これ残さず飲んで?」
「っ…ぁ、あの…」
「何でもやるアバズレなら飲めるやろ。妊娠してここから出たいんやろ?」
それはそうだがこの量はいくら何でも多すぎる。
何本入れたかわからない。
…こんな大量の量を飲んだらずっと発情しっぱなしで、脳ミソまでおかしくなるんじゃ…
「重いわ~」
「も、持ちます!すみませんっ」
とは言ったものの直哉くんの機嫌を損ねるわけにはいかない。
液体だけでなくジョッキの重量もある。
飲むと決めたら一気に飲まなきゃ、途中で発情して約束を守れないことになってしまう。
「…!」
中々覚悟が決まらずビールジョッキと睨めっこしていると、異変に気付いた夏油先輩が近付いてくる。
五条先輩が「行くな」と制止したようだが、何かを言って夏油先輩と一緒に覗きに来てくれる。
後ろを確認すると直哉くんは動く気配がなかった。
“そこで何してるの?”
心配してきてくれた先輩達に涙が滲む。
瞬きをしてないのに涙がポタポタ零れてきて、ビールジョッキから片手を離したら気持ちと一緒に崩れてしまいそうになる。