第57章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-漆-
先輩達はわたしの覚悟を察し、気を利かせて見ないフリをしてくれたと思ったのだが、直哉くんにそう言われてしまい一気に不安が強くなる。
…見損なわれた?
ガラガラと椅子を引く音を感じ、扉の前に椅子が置かれる。
「その椅子の上がなまえちゃんのスペースやからね」
「…え?」
「客がおらんと盛り上がらん。今度誘う時は向こうの連中に最後までセックスショーみてもらわんと。もしそのスペースから出たらまた首絞めやから」
「…」
なんでわたしが一番嫌がることをしてくるのだろう。
直哉くんとのセックスは許容できても、その光景を見て欲しいとは思わない。
むしろずっと隠したかった。
先輩達を傷付ける以前に自分の感覚がおかしくなりそうだったからだ。
それなのに直哉くんは客を呼び込めと扉の前に座らせて、先輩達の注意を引こうとする。
…どうしよう。
これじゃあ先輩達に不快なものを見せてしまう。
逆の立場だったら見ていられない。
先輩達が他の誰かを抱いている様なんて想像もしたくない。
それがお似合いの女性だったら尚更…
「っ…」
考えても埒が明かない。
最初にお話をすればよかったと深く反省する。
「…直哉…くん…」