第57章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-漆-
「げほっ…げほっ、ごめ…んなさ」
「謝るなら集中しい」
首から手が離れると顔に血が上って熱くなった。
直哉くんをその気にさせるために舌を突き出し、思い切って絡ませていくと、くちゅ…と小さく音を鳴らして答えてくれる。
「んっ…ふぅ、ぁ…っん…」
これ以上、乱暴なことはされたくない。
言うことを聞けば優しくしてくれるはず。
夏油先輩は元々優しいけど、近寄りがたかった五条先輩も意地悪してきた伏黒さんも今の気持ちを伝えたら優しく抱いてくれた。
直哉くんの引き締まった背中に大胆に手を回すと、次第に手のひらのぬくもりも感じるようになり直哉くんも夢中になってくれているようだ。
これで上手くいけば…
「…あ?なまえちゃん、向こう見てみい」
ちゅぱっと唇が離れ、熱っぽい顔で見つめ合っていたかと思ったら直哉くんはシラケた顔をする。
「…?」
同じ方向をみるもシラケた理由がよくわからない。
「誰もおらん。君、アバズレやと思われたんやろね。あーあ、おもんな」
その言葉に理解が追いつかなかった。