第57章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-漆-
「ひぃっ」
「なあなまえちゃん。話すの嫌やったらイイコトしよ?」
「っあ、あ…ぁのッ、く…首っ…」
自分で足腰を立て直したのに手を離してくれない。
たまたまそこを掴まれたと思いたいのだが、ぐっと圧迫する力が強まる。
「あーこれ?苦しい?」
「っ…は、ぃ…」
ただの首を掴まれているのではない。
この締め方は完全に血管を塞いで意識を落とす締め方だ。
本気で絞められたら十秒ほどしかもたないが、いつでも落とせるとこの状況を楽しんでいる。
「!…あれ、甚爾くんや。仲ようやってるで~」
ガンッ!!と地響きでも起きそうな拳だった。
気付いてくれた伏黒さんは目を見開き、わたしを助けようと拳を扉に向かって叩き込む。
一方、直哉くんはもう片方の空いている手で伏黒さんに向けて手を振っている。
「甚爾くんもいけずやね。僕もなまえちゃんにハメたいから協力してくれってお願いしたのにダメの一点張り。あれダメ、これダメ、それダメ、ダメ×4って…すっかりなまえちゃんの体に骨抜き状態」
「っく…」
伏黒さんの叩いた音に気が付き、向こうの車両が明るくなる。
わたしの軽率な行動で夏油先輩や五条先輩、七海くんが扉の前に駆け寄ってくる。