第57章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-漆-
「つれないなぁ」
そう言って直哉くんは手前の椅子に座る。
…今さっきお水を飲んだばかりなのに異様に喉が渇く。
早く、先輩達のもとに帰りたい。
でももし扉が閉まってたらと思うと泣きそうになる。
「じゃあもうひと眠りしたいので…失礼します」
お願い!
開いて…!
扉はこんなに重たかっただろうか。
ビクともしない。
「…お利口さん。ようやく邪魔もん消えたわ」
「ヒッ…」
背後にすり寄った直哉くんが開かない扉を撫で、扉越しに直哉くんの歪んだ表情が映る。
「仲ようしようや」
耳元で囁かれ、ゾワっと背筋が震える。
…嫌だ。この人は危険だ。
そんなに悪くない人だと思ったけど嘘!!怖い!!
「っ…い…っやぁぁぁ…」
「そんなん顔されたらもっと歪めたくなるやろ」
膝から崩れ落ちそうになると首を掴まれ、べろりと耳の後ろを舐められる。
夢で感じたような生々しい感覚。