第56章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-陸-
「奪い返す…!」
「そう簡単には渡さないよ」
今度は夏油先輩から指示をもらいながら割り箸を引き抜き、五条先輩はいつになく真剣な表情で割り箸を抜く。
「よし!なまえ、俺んとこ戻っておいで」
「ううっ…夏油先輩、ごめんなさい」
「いいんだよ。すぐ取り戻すから」
ニコッと腕の中から解放され、五条先輩のもとに戻ると「おかえり」と言われて唇が重なる。
こうして割り箸の取り合い…と言っていいのだろうか。
わたしは一度も勝てず行ったり来たりを繰り返す。
けれども先輩達は勝っても負けても何故だか満足そうな笑みを浮かべており、結果的に楽しくゲームができてよかったと安堵する。
「…そろそろ昼飯時か」
「なまえのお腹も鳴ってるしね」
「うっ」
きゅるる~とお腹で返事をしてしまい、最後に勝った五条先輩に下腹部を撫でられる。
「ははっ、俺の体内時計よりも正確かもな」
「そ、そんな食いしん坊じゃないですっ…!」
「食べてる様は気持ちがいいよね。七海達もお腹を空かせた頃だしはじめるかい?」
夏油先輩から話を切り出す。