第56章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-陸-
「ゲーム?」
「そうです。ここに割り箸があるのでぐらぐらゲームに因んだ割り箸取りゲームっていうのがあるんですけど…」
割り箸のタワーを崩さないように一本ずつ取っていくシンプルなゲーム。
ぐらぐらゲームなら自然に体を離せるはず。
そう思って三戦くらい交えるも五条先輩は器用にわたしを腰に抱えながらも勝利してしまう。
言い換えれば毎回わたしの番で崩れている。
「はい。なまえの負け―」
「なんでっ…、どうして…!ハンデつけてもらったのに勝てないの…ううっ」
バランス系のゲームはそこそこ強いと自負していた。
灰原くんや七海くん達と遊ぶと毎回「僕、不器用なんだよね!」と灰原くんが爽やかに崩し、七海くんとの真剣勝負では引き分けが続いていたのに…先輩達が強すぎる。
「ならこうしない?」
夏油先輩が何か思いついたように提案する。
「悟はなまえに取る割り箸の指示をする。勝てばなまえからキスがもらえるご褒美付き。勝敗がつくたびに指示権と唇がもらえる、いい方法だと思うんだけど…」
いかがわしく聞こえるのはこの電車のせいだろうか。
それとも五条先輩と密着し過ぎたから…
「ふぅん。いいね。乗った」
「え」
わたしには拒否権がなく四戦目がはじまる。