第56章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-陸-
「わたし、やっちゃったかもしれません…」
最後にわたしがシャワーを浴びて二十分は経っただろうか。
伏黒さんと二人きりだった時もこの扉は開いていた話だったのに、時間制限でもあるのか固く閉ざされる。
「こっちは大丈夫だ。んだよ…心臓に悪ぃ」
五条先輩にひどく同感だ。
「激しく同感だよ…」
夏油先輩も深く頷いており、浴室を使うにはまた誰かとシなければならない初期設定に戻ってしまう。
「何がトリガーなのか不明だが、ひとまず二人きりにならなければ閉まる確率も低いと思うんだが」
「そうだな。ってことで絶対一人行動すんじゃねぇぞ、なまえ」
瞳を凝らしてじっと見られたからドキッとする。
集団行動は慣れているし、問題ないだろうと頷くと隣に座っていた夏油先輩はピリッとした空気を醸し出す。
「…悟。昨日はスルーしていたんだけど、下の名前で呼ぶ許可は貰ったのかい?」
「んなもん取る必要ねぇだろ」
「今まで名字呼びだったくせに急に馴れ馴れしいと思う」
「はっ、何お前。妬いてんの?」
五条先輩は勝ち誇った笑みを浮かべ、夏油先輩は眉間にシワを寄せる。
「呼び方ひとつで揉め合うなんて平和な人達ですね。お手洗い行ってきます」