第56章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-陸-
「時計は…」
「体内時計」
なるほど。五条先輩なら時を刻む音さえ感覚でわかりそうだ。
そう考えるとわたしの腹時計はあながち間違ってないのではと思ってしまう。
伏黒さんも先にご飯を食べたみたいだがシャワーを終えると同じ空間から遠ざけるように一両目に行ってしまう。
いや、正確には遠ざけているのではない。
わたしがそう感じるだけで、初日と変わらない距離感に戻っただけだ。
わたしもご飯を食べ終わってからシャワーを浴び、二両目には高専組だけが残る。
「車両に閉じ込められない方法を模索していたんだが、物を挟んでもどれも拒絶されてしまってね」
「え。そうなんですか?」
気持ちを整理するためにもセックスはなるべく控えたい。
そう思って夏油先輩に尋ねてみたらまたもや理不尽なことが発覚する。
「バスタオルも椅子も目を離した隙に瞬間移動してる。試しにジャンケンで負けたやつをそこに寝かしてみたら、意識があるものは拒絶されなかった」
「まるで生きてる電車みたいですね…」
理屈はわからないがこの電車は閉じ込める資質をもつ。
試しに瞬間移動する瞬間をみたいと思って、三両目の扉に手をかけると…
「え?えっ、うそ…」
「どうしたんだい?」