第56章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-陸-
目を逸らされるかと思った。
「っ…大丈夫、だよ…」
七海くんはわたしの目を見て言ってくれる。
表情は全然大丈夫じゃなさそうだけど、わたしのことちゃんと見てくれる。
「ごめんねっ…七海くん。変なことに巻き込んじゃって本当にごめんね」
「一番巻き込まれてるのは貴女でしょう。この状況を私なりに理解してるつもりです。自分を責めないでください」
「うん…、ありがとう。七海くん」
七海くんが苦しみながらも気持ちを理解し、共感してくれるから一番嬉しく感じる。
この中で一番長い時間を過ごす同級生だからだろうか。
「お腹空いてませんか?数分おきに三両目の扉を確認していますが浴室もまだ繋がっていますし…」
「あっ…うーん。先に食べたいかも」
「貴女は食べるのが本当にお好きですね」
七海くんに控えめに笑われ、頬が熱くなる。
生きているからお腹が空くんだもの。
食べることが好きなのでここぞとばかりに好きなものを注文する。
「…そういえば今、何時頃か分かる?」
横に座る七海くんに聞くと五条先輩が口を開く。
「十時過ぎだな」