第56章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-陸-
一時はどうなるかと思ったけれど伏黒さんは約束を待ってくれたし、先輩達が待つ二両目の車両にそっと顔を出す。
「あのっ…先輩…」
罪悪感で声が小さくなると夏油先輩が優しい声を出す。
「深く追及しないことにするよ。悟と決めたんだ。彼に決めたわけではないんでしょ?」
「はい…」
わたしの中では夏油先輩も五条先輩も伏黒さんに対しても同じ気持ち。
宙ぶらりんの自覚があるだけに身も心も萎縮する。
「んな顔すんなよ。俺らが悪いことしてるみてぇだろ」
「実際困らせることしてるんだから私達も弁えて接しないと」
「はあー…。ツラ」
五条先輩の気持ちが身に染みて痛感する。
夏油先輩だって同じくらい辛いはずなのに完璧主義的なところがあるから表情が見えにくい。
それと気掛かりなのはもう一人…
「…七海、くん…」
同級生の七海くんにも醜態をさらしてしまった。
媚薬だけのせいじゃない。
妊娠だけが目的じゃない。
そんな気持ちになってしまうほど色んな男性とのセックスに溺れて、乱れて、七海くんにふしだらな女だと思われても仕方がない。
「…私は大丈夫ですよ。お加減はどうですか?」