第55章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-伍-
「見せれないの?」
「…ごめん、なさい…」
「なら俺のさっき言いかけたこと聞いてくれるか?」
伏黒さんの声は嘲笑っている様子はない。
非常に穏やかだった。
「な…なんですか…?」
そういえば何か言葉を遮った気がする。
自分のことでいっぱいいっぱいで妊娠しても恨まない憎まないだとか言った気がする。
その瞬間、伏黒さんの空気感が少し変わって…。
「一回じゃ到底おさまらない。せめて三回は中出しさせて欲しいっていうお願いをね」
「!?」
妊娠どうとか関係なく、己の快楽を満たしたいだけのようにも聞こえる台詞。
「ダメかな?」
優しげな台詞に男のいやらしさが垣間見える。
この条件を飲むか、自分で見せるか、究極の選択肢が頭を駆け巡る。
「他に…譲歩、できることは…」
「ないな。あんなイイ声聞かされちゃ一回で終わらせる気にならねぇ」
これ以上、駄々をこねたら本気で相手にされなくなる可能性がある。
どちらにせよ正気でやることができない。