第55章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-伍-
この人は遊び慣れている。
そして戸惑うわたしを見て面白がっている。
「…っ」
感情を出さないつもりだったけどちょっと傷付いた。
恋愛をしたことがないから遊ばれる女の人の気持ちというやつを知らなかったが、今知った。
本気じゃないセックスってめちゃくちゃ虚しい。
「…、…」
さすがに堂々と脱ぐ勇気はなくて、少し横向きになって恥ずかしさを軽減させる。
脱いだパンツはポケットに突っ込み、どこに座ろうかとあたふたするわたしを見兼ねて伏黒さんは目の前のシートをぽんぽん叩く。
「出してほしいところ見せて?」
「…え」
今さっき聞いたような台詞だ。
わたしがそれ以上口を動かさないでいると伏黒さんは言葉を続ける。
「トイレの中で見せたようにお嬢ちゃんのいやらしいところ、見せて?」
「!?」
脱ぐだけじゃ相手にしてもらえないんだろうか。
媚薬の効果はとっくに切れているのにパンツを履いてないところが勝手に濡れてきて、これ以上できそうになくて涙ぐんで訴える。
「で…できない…、です…」