第54章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-肆-
「最初はただの腹ペコの嬢ちゃんかと思ったが直接話してみてわかった。仕草や表情が俺好みだったんだな。道理でほかの男も離したがらないわけだ」
「え」
「それに可愛いから余計に構いたくなる」
伏黒さんに熱っぽく見つめられ、指先で髪をすくわれてドキッとする。
急に甘い雰囲気になり戸惑った。
仕草や表情を褒められたのなんて初めてだし、離したがらないって言葉もイマイチピンとこない。
「み、皆いい人達なんです。今のわたしがあるのは皆のおかげだから…恩返ししていきたいんです」
「真面目だね」
「呪術師ですから」
自分以外にも沢山仲間がいる。
その言葉に何度救われただろう。
入学初日、一人俯いた顔をしたくなくて緊張して笑顔を作ったけれど灰原くんも七海くんも素で向き合ってくれて、いつの間にか心の底から笑えるようになっていた。
灰原くんや七海くんは特に温かな気持ちにさせてくれる。
伏黒さんはわたしの顔を見るなり、口元を緩ませた。
「いい奴らに出会えて良かったな」
「はい。伏黒さんもお話聞いてくれてありがとうございます」