第54章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-肆-
「そうなんですか!?」
「考えても見ろよ。俺らはあの吹き溜まりのような呪いと対峙してきたんだぜ?」
そう言われればここには呪いが存在しない。
呪いはわたしたちの源といっても過言じゃないのにまったく干渉しない異空間。
五条先輩の六眼が機能していないのが確たる証拠だといってもいい。
「そうかも…知れませんね…」
「ガッカリさせたか?」
「いえ、その方が理にかなっています。でも、その、あんなにしてるのに妊娠しないって、どう考えてもわたしの体がおかしいからじゃ…」
保健体育の授業で性教育の勉強をした。
ゴムをつけないと妊娠するリスクがあるし、エイズになるリスクもあると教科書に書いてあった。
「回数をこなしたからって妊娠するとは限らない。要はタイミングだ」
「ということは…」
「排卵日だな。月経の記録とか付けてるか?」
それは勿論、術師になってから任務に支障がないように記録する習慣をつけた。
最後に記帳した内容を思い出すと、生理が終わって一週間だからその時期に入っていてもおかしくない。
あれ?ってことはやっぱりわたしの体…
「それにしてもアンタ隠すの上手いな」
思い詰めた顔をしているとフッと柔らかい表情を向けられる。