第54章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-肆-
すると直哉くんは豪快に鼻で笑った。
「はんっ!中出しセックスやり放題やもんね。一回で妊娠させれヘんって体液腐っとるんとちゃうん?」
散々煽られた仕返しというべきか。
嘲笑いながら直哉くんの口から「腐ってる」という表現を聞いて、キリキリと胸の内側にある奥深いところがざわつく。
「禪院くん。向こうで話そうか」
夏油先輩がニコリと笑って車両の扉を開ける。
「直哉でええよ。苗字呼びしなくてええわ」
「綺麗に洗ってやるからこいよ」
五条先輩は直哉くんの肩に手を回す。
「いらん。自分で洗えるわ」
「私も同行します」
七海くんはスッと立ち上がり直哉くんの後ろに立つ。
「いや、いらんて」
「後が詰まってんだ。そら行った行った」
伏黒さんは七海くんの横から顔を覗かせる。
「えっ、何!?甚爾くんまでどうしたん!?」
パタン…と三両目の扉が閉まり、先輩達の声が聞こえなくなってしまう。
…何にも聞こえない。
電車の音だけがガタンゴトンと虚しく響き、何だか急に悲しみが込み上げてきて、その場から逃げるように一両目のシートにうつ伏せになる。