第52章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-弐-
家の事情を話す五条先輩は何だか遠い目をしていた。
「セックスって好きだから触りたいんじゃなく、性欲満たしたいからヤリたいだけじゃんってバカにしてた。俺は皆とは違うのかって、ずっとそう思ってた。…そんな時、お前と出会って、目が合うだけで小動物みたいにビビりやがるし、イライラするし、むしゃくしゃするし、お前のこと考えると無関心じゃいられなくなって…なかなか答えが出なくて苦しかった。…ごめんな。アイツみたいに優しくなれなくて」
自信満々の告白ではなく、力なく笑いながら乱暴だと思っていた五条先輩が想いを伝えてくる。
そんな風に思われてたなんて知らなかった。
「お前を抱きたい」
その言葉はきっと性欲を満たすものではなく、気付いた意味で抱きたいと言った。
「…わたし…先輩の気持ちに答えられるか…」
「まだ分かんなくていいよ。お前が鈍いの承知で言ってる。その気持ちだけで今は十分だ」
ぎゅっと五条先輩の長い腕が背中に回ってくる。
密着すると思ったよりガッチリした体つきでビクッと体が反応してしまう。
「キスしていい?」
「…ん…」
耳元で囁かれ、真っ赤な顔を見られたくなかったけど五条先輩とキスしてみたくて頷く。
向き合う恥ずかしさのあまり顎を引いてしまい、それでも五条先輩は引き下がらずに強引にキスをしてくれる。