第52章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-弐-
夏油先輩はそう言って二両目の車両に移動してしまい、再び五条先輩と二人きりになってしまう。
「さっきは無理やりするような真似して悪かった」
「え」
しょんぼりした声が聞こえて耳を疑い、思わず五条先輩の顔をマジマジ見る。
「なんだよ。その顔」
「…いえ。大きな声を出したわたしが悪いので…」
「お前は謝んなくていーよ。責任とるって言うのはマジだから」
五条先輩は急に照れくさそうに頭の後ろを掻く。
「え、でも、先輩は御三家の…」
「んなこといちいち気にする立場かよ」
立場、といわれてモヤっとする。
「すみません…」
「だから謝んな。いや、ちょっと冷たく言い過ぎた…。悪ぃ…」
今日は何だか五条先輩らしくない。
ひどい言い方だけど、五条先輩ってもっと無神経な人かと思っていたけど案外繊細な人だったのかと疑ってしまう。
「どこの家でも似たようなことしてるけど親同士が決めた候補なら何人かいる。外でばら撒くわけには行かねぇし、そういう相手も何人かいた。…けど、それはただ快楽を得るだけの行為であって、お前から見れば遊び人ってやつだな」