第52章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-弐-
「可愛い」
「っ…」
至近距離でニヤッと笑われ、間もなく綺麗な唇がまたちゅっと重なる。
「嬉しい。ずっとこの唇にキスしたかった」
「っ…恥ずかしいです…」
「照れてんの~?」
唇を甘く撫でられ、わたしの羞恥心を煽るようにケラケラと笑う。
五条先輩が元気になって良かった。
今まであからさまに避けていたのは申し訳ないと思うけれどあれではどう考えても気付かない。
それに無力に近い状態になって、壁を蹴ったりしてたから少しでもセックスで気分転換できたらと思ってしまう。
「…あれ?五条先輩。サングラスは…?」
「ん?今更かよ」
懐にあるとサングラスを見せてくれるも、よくよく思い出したら扉を無理やり開けようとしてた時からつけていなかったように思う。
「ここじゃ六眼も封じられてる。となると呪力そのものが存在しない空間、天元がいない別空間って考えるのが自然だと思うんだよね」
「天元様がいない別空間…」
夢や幻術のたぐいにしてはあまりにもリアルな感覚。
もし目覚めた時、同じ意識を共有していたならその時は…