第52章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-弐-
「なんや。もう終わったんか?」
「あ、わたしも焼き鳥食べたいです!うわあっ、本当に出てきたぁ!夏油先輩っ、七海くんっ、一緒に食べましょ…!」
「現金なやっちゃなぁ…」
一声かけたら一瞬で料理が出てきた。
手拭いで手を拭き、調理スペースをチラッと覗いてみるも人影はない。
「いただきますっ、はむっ!ん~!美味しい~!」
「普通こんな怪しい出され方したら疑うやろ」
座れる場所はカウンター席の六席しかなく、丸椅子に座りながら店内をぐるりと見渡す。
店内の灯りはオレンジ色の淡い照明。
ここでもレールの上を走る音が聞こえている。
広さは一両目の車両と同じくらいだろうか。
「夏油先輩、七海くん、お腹空いてないんですか…?」
切り替えが早いと思われるかもしれないが、味覚をそそる匂いを嗅いだら空腹感が急激におとずれた。
だから仕方がない。
二本目の串に口を付けるも二人とも頼む気配がなかった。
「これ…食べても平気なんですか?」
夏油先輩がわたしの焼き鳥を見ながら訊ねる。
「三十分経過してるが異変は感じねーな。匂いも味もただの焼き鳥だよ」
ひと席空けて座る伏黒さんが親切に教えてくれる。
「僕が見つけて甚爾くんが体張ってくれたんや。有難く食うんやで」