第52章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-弐-
わたしが嫌がって泣いているから話す気にもならないってこと?
五条先輩は蓋を開けた小瓶を押し付けてくる。
頭上から見下ろしてくる五条先輩の目はギラギラと碧く光っている。
「乱暴な真似はよせ。彼女はそれを望んでいない」
向こうから夏油先輩の声が聞こえ、五条先輩は鼻で笑う。
「はっ。もう彼氏面かよ」
「何…?」
「こっちはデカい喘ぎ声を散々聞かされてもうビンッビンだよ。のん気に飯なんて食えるかってぇの」
「訳がわからない。彼女を解放しろ」
「まわり、よく見てみろよ」
会話が途切れたように間が開いた。
五条先輩は夏油先輩との会話に意識が向いている。
それにしても「飯が食える」と聞いて、その続きが気になってしまう。
「…あの二人はどうした?」
「第一ラウンドが終わった頃かな。それまで見えなかった向こうの車両にカウンター席が現れたんだ。人は乗ってなかったが一声かければ飯が出る」
「意味がわからない…」
「夏油さん、すみません。五条さんがこのような愚行に及び復活しました。男として嫌われるのは目に見えていますし場所を変えてお話しします」