第51章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-壱-
夏油先輩の手がゆっくり伸びてきて身をよじると、ふわりと全身を包み込むように抱き締めてきた。
「震えてる…。怖いよね」
「違、うんです…。怖いとかじゃなくて…」
どうして良いのかわからない。
夏油先輩のことは好きだし、頼りになるし、心強い正義の味方だから優しさ溢れる手を取った。
「好きです、夏油先輩。ちゃんと好きなんです…っ、けど、ちゃんと出来なくて…ごめんなさい…」
セックスってどうやるんだろう。
キスってどうやるんだろう。
知識がないのでエッチなことはあやふやで、夏油先輩の大きくて温かな体にどう触れていいのかわからない。
「っ…ごめんなさい。薬…飲んでも頭おかしくなってくれないです…っ。体ばっかり…熱く、なっちゃって…」
今ならどこを触られても変な声が出そうだ。
触ってほしくてたまらないのに理性が勝ってしまい殻を破れない。
「媚薬は頭をおかしくする薬じゃないよ。体を無理やり発情させて感度をあげる、そういう薬なんだ」
「そう…なんですか…?」
「ごめんね。てっきり知っているものとばかり思っていた。このまま何もしないのはツラいよね…」
「…はい…」