第51章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-壱-
「灰原くんですか?」
「うん。みょうじ的にアリなのかなって…」
アリかナシかで聞かれればアリだ。
単純にナシと答える理由がないのだが。灰原くんは親しい友達だけどずっと友達でいられるようなオーラをまとっている。
「どちらかというとアリ…なんですけど、わたし今まで恋愛に本気になったことがなくて…」
「いいなって思う人は?」
「それなりにいましたよ。スポーツができる子だったり、見た目がちょっとワルな子だったり、それなりにいいなって思うことはありましたけど…、っ」
何気ないのんびりとした会話をしていたら、やたら体がポカポカしてきた。
これって…さっき飲んだ薬のせい、なの?
「効いてきた?」
「はい…たぶん…」
もっと普通の会話がしたかった。
いくら深呼吸を繰り返しても熱は抜けていかない。
出てくるのは熱い息のみ。
不安で脈拍まで速くなってきた。
「大丈夫。みょうじが嫌がることはしない」
「…夏油…先輩…」
「怖がらないで。胸は…?愛撫されるの嫌かい?」
「わから…ない、です…」
体を隠すように胸のまえに置いていた腕を見られる。
自然の防衛本能だったのだろうか。