第51章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-壱-
後ろめたさがいっぱいで向こうを見ることができず、トイレの開閉扉が静かに閉まる。
「き、綺麗なところですね…」
「座席もそうだけど割と新しいよね。転送されるなら電車じゃなく、横になれる部屋が良かったけど」
「あはは…」
激しく同意はできなかったが同感だ。
よりによって出れない部屋ではなく電車。
初めてのセックスならぬ、複数人に見られてしまうかもしれない場所に飛ばされてしまうなんて思いもしなかった。
「灰原と三人でディ〇ニーランドに行ってたんだってね。七海から聞いたよ」
「はい。皆でカチューシャつけて遊んでました。高専って交流会があっても修学旅行とかないよねって話してたことがあって…」
「ほとんど任務やら鍛錬漬けだしね」
呪術を学ぶためだけに設立された高等学校。
青春も恋愛もすべて捨て去る思いで呪術師の道を選び、そんなガチガチの覚悟をして行ったのに非術師家系出身の灰原くんと七海くんに出会った。
第一印象から変わらない灰原くんのようなキャラがいたから溜め込んでいたガスがすっと抜けて、明るく笑って過ごしてもいいんだって思える日を多く過ごせている気がする。
「こんなこと聞くのは野暮なんだけど、灰原のことはどう思ってるんだい…?」