第51章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-壱-
ただ電車が走る音と直哉くんがひとりでに喋っていたおかげで気付かなかったが、前に座る先輩達も、横に座る七海くんも口を閉ざしている。
「…、…っ」
こんな沈黙耐えられない。
助けを求めるように夏油先輩にじっと視線を投げれば眉毛を八の字にし、七海くんを見るとあからさまに視線を逸らされてしまう。
見ちゃったんだ。
七海くんも夏油先輩も。
あの電光掲示板に流れるいかがわしい文面を。
…でも、どうにもできない。
できるはずがないじゃないか。
「このまま何もしねぇと一方的に体力奪われるだけだ」
五条先輩は静かにつぶやく。
「悟っ…!」
夏油先輩は声を荒げる。
「見ただろ。それに荷棚にはご都合アイテムもある」
五条先輩はズボンのポケットから小瓶を取り出した。
ピンク色の可愛らしいデザインなのだが、それが何を指すものかわからず首を傾げる。
「それは…?」
「媚薬だ。名前くらい聞いたことあんだろ?」
「!!」
驚きすぎて言葉を失う。