第51章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-壱-
厳しい顔つきで不安の色をにじませる七海くん。
ここは呪力がまったく感じられない。
先輩達が人力でこじ開けようとする姿に納得していると、突然、ガンッ!と壁を蹴りつける音に肩が跳ねる。
五条先輩だ。
おそれるように目を向けていると五条先輩の横にいた夏油先輩と視線がぶつかった。
「目が覚めたんだね。具合はどうだい?」
「はい。大丈夫です…」
目の前の座席に腰を下ろした夏油先輩は優しげな口調で気にかけてくれる。
夏油先輩は上級生の中でも特に信頼できる先輩だ。
七海くんがいるだけでも心強いのだが夏油先輩がいるとなればさらに心強い。
「って、あれ?灰原くんは?一緒に遊んでたのに」
背筋を伸ばしてキョロキョロあたりを探るも気配だけでわかる灰原くんの姿がどこにもない。
「それが彼はどこにも見当たりませんでした。一般人ではなさそうですが、面識のない方々も一緒に巻き込まれている。そもそもこの二人を領域に閉じ込める術師がいるとも考えられず…」
「七海。これ領域レベルの話じゃねーよ」
夏油先輩の横にドカッと腰を下ろした五条先輩は投げやりな態度で言い放つ。
「では幻とでも言うんですか?」
「いや。リアルに近いが説明がつかねぇ空間ってとこ」
五条先輩はヘラッと口角を緩ませ、内面ホッとする。