第51章 五/夏/七/甚/直 妊娠しないと出れない電車-壱-
「…あれ?…」
窓ガラスの部分が真っ暗に覆われた電車。
電車が走る音が聞こえるのに揺れはなく、ただ真っすぐにレールの上を走っている奇妙な感覚。
「起きましたか?」
「…ななみ…くん…?」
ロングシート式の座席から体を起こすと同級生の七海くんが心配そうな顔で声を掛けてくる。
「せーのっ!」
「ふんっ!…チッ、ビクともしねぇ」
その先には電車の開閉扉を人力でこじ開けようとしている夏油先輩と五条先輩の姿。
「ダメだなこりゃ。完全に閉じ込められた」
「甚爾くんでも開けられへんなら無理やん」
あとは見知らぬ男性が二人。
一回りくらい年上の筋肉質な男性とわたし達と同い年くらいで金髪の関西弁口調の男の子。
どうやらこの電車にはわたしのほかに五人の男性が乗り合わせていた。
「どうしてこんなところにいるの?それに閉じ込められたって…。あれっ?呪力が…」
頭で考える前に呪力感知がはたらくと違和感を覚える。
「そうなんです。私達もつい数分前に目覚めたばかりで状況が把握できていません。あの人達に任せてドアからの脱出を試みたのですがダメだったようですね」