第46章 夏油傑 親友の彼女-玖-
「わたしのこと嫌いになった…?」
「ううん。もっと好きになったよ。
…大それたことなんだけれど一人で辛かった時、この腐った世界をどうにかしたくて非術師を皆殺しにしたらどうかって馬鹿げた妄想をしたことがあるんだ」
「…!」
「引くよね。自己矛盾もいいところだ。
なまえがそばにいて話を聞いてくれたから人類に完璧さを求めるのは諦めて、自分を壊さずにすんだんだ」
術師というマラソンゲーム。
術師は闇の中で呪いを祓い続け、呪いを生み出す非術師を尊ぶ間違った世界。
真の意味で正すべきは非術師なのだ。
ひとりひとり正しい在り方に導く時間はない。
それならばありったけ取り込んだ呪霊をぶつけ、理想の世界を実現させるためにリセットしようと考えたひどい妄想だ。
「私の方こそ嫌われないか心配だよ…」
「嫌いにならないよ。ただそこまで思い詰めてたんだって驚きはしたけど」
「ははっ、もう闇落ちするような要因は洗いざらい話したから大丈夫だよ」
もし制裁を加えることでなまえが苦しむなら誰よりも早く気付いてあげたいし、頼りにしてもらいたい。
なまえの気持ちに共感できるから私も自分の気持ちを話したいと思った。