第46章 夏油傑 親友の彼女-玖-
その後、少女の希望でいじめられている事実は伏せて母親に説明し、呪術高専入学を勧めた。
母親は少女の不思議なチカラを認知していたため、話はそれほど込み入った話にはならなかった。
「あとは四人を制裁して…」
「待って。今なんて?」
「この四人は標的を変えていじめを続ける。そういう危険が見えるの。だからこのままにしておけない」
ひと段落したところでなまえは電話をかけ、元呪詛師に連絡を取った。
元呪詛師であっても一度はなまえに惹かれた者達だったため多少能力をこき使われようとも反発は少なく、なまえや悟の下で働いているのは知っていた。
繰り返すいじめの防止。
なまえがやりたいことはわかるが、相手が懲りない生意気ないじめっ子だとしても果たして非術師に呪術を向けていいものかと抵抗を感じる。
「悟は知ってるのかい…?」
「知ってるよ。
先生も硝子もわたしが助けた人は皆知ってる。傑は優しすぎて…嫌われたくなかったからずっと言えなかった…」
こんなことで嫌いになるはずなんてない。
私はずっと周知の醜悪をわかっていながら目をつむって生きてきたのに。
「君はすごいな…。私には真似できないよ」
「危険予知ができるから許されたけど、一歩間違えれば呪詛師だもんね。しばらく夜蛾先生と一緒にいたのもこういう事情があっていっぱいお話してたの」
「なるほどね。やけに構うなと思ったらそういうことだったのか」
たった四人のいじめっ子を抑制したからとはいえ、世の中からいじめが消えることはない。
だがやっていることは意味がないとは思えず感服する。