第46章 夏油傑 親友の彼女-玖-
術師として改めて生き方を考えた時、高専に残るよりもフリーの術師として活動するのが自分に合っていると思った。
親友、という立場はずっと変わらないのに「俺達(私達は)最強」という言葉がある意味、呪縛となってしまい対等の関係であるべきだと固執していた。
けれどもうそんな遅れをとる必要はない。
私達は親友なんだ。
あの日、悔しいことが重なり過ぎてわからなくなっていたが、私が一番苦しかったのは敗北したことでも最強に成れなかったことでもない。
悔やんでも悔やみ切れない救えたはずの命。
守り切れなかったのが一番辛かった。
その苦い経験を糧にして思想が似たなまえと一緒に行動するために動きやすさを重視し、最悪な未来を起こさせないためにフリーに動くのが最善だと考えた。
「…ああ、この家か」
「学校に出向くと他の子に目を付けられちゃうから。
帰り道で待ってようか」
どこにでもある負の淀み。
呪霊が発生してなければ危険性は低く、私でも見送りするレベルのものだ。
帰宅時を狙って待機しているとなまえは顔を上げた。
「その力の使い方、あとで反動きちゃうよ」
「…!!」
「私達は君と同じ見える側、使える側の人間だ。
話を聞いてくれるなら、君をいじめているその四人と関わらない場所を提供すると約束するよ」
いじめられるためだけに学校へ通っていた少女。
いじめを知られたくない、必死に隠すのは当然の心理だ。
反動と含ませた言い方によって少女の表情は曇っていく。