第46章 夏油傑 親友の彼女-玖-
「マフラー持ってきたから平気。
それより悟があんな過保護になるとは思わなかったよ」
「妻子持ちになると色々大変なんだ。
最強であるからこそね」
悟が誕生した影響で多くの呪詛師は金儲けよりも命が惜しく、活動を自粛せざるを得なかった。
なまえと結婚するとその噂は呪術界全体へと広まり、根に持った呪詛師が復讐などで暗躍する可能性があると異様に尖らせていた空気を知っていたからわかる。
悟がなまえを愛するようになまえにも救いたい命があった。
簡単に引き下がろうとしないなまえは目的のために自身の術式であればちまちまやらずとも短縮できる。
それに加えて私の会話術で人を誑し込めばいいと言われ、なまえに人たらしだと思われていたのはショックだったが悟もそれで渋々納得した。
「そう言えばミミナナちゃん達の見送りがなかったけど
何か言ってきたのかい?」
「聞き分けがいい子達だから大人しく待ってるって。
それに灰原くん、意外にも小さい子の面倒見慣れてるから任せちゃった」
「妹がいるだけにね。教育面でいえば大きな戦力だよ」
なまえの危険予知が的中し、灰原はヒヨるどころかより一層熱が入ってしまった。
その灰原は一年後に卒業を控え、教師になりたいと張り切っており、逆に七海は高専には残らず、一般企業に入社する意志は固いようだった。
「あれ。なんか軽くディスってない?」
「後輩だから厳しくなるのかな。
私は相談役になっても教師になる気はないよ」
「ずっとフリーでやっていくつもり?」
「うん。そのうち気が変わるかもしれないけどね。
しばらく俯瞰して生きてみたいんだ」