第46章 夏油傑 親友の彼女-玖-
悟は強く聡い仲間を育てることで術師を守る未来にも一歩近づける。
まずそのためにクソまみれの呪術界の上層部をリセットする必要があると、途中段階の計画を教えてくれた。
話は逸れるが、九十九さんから聞いた原因療法…全人類に呪力のコントロールを可能にさせる、つまり皆が術師になればという話を悟にもしてみたらなまえと似通った意見で「未熟なまま人類が進化すれば、ミサイルやサイバー攻撃という兵器が呪術に置き換わるだけ」と現実的な見方を示した。
ただ、呪霊を生まれなくしたいだけなのに周知の醜悪さまで一緒に祓ってくれない。
戦争や紛争、身近ないじめがなくならないように弱者や優しい者達が捕食される世界。
…けれど、きちんと話せてよかった。
私は全人類に完璧さを求めすぎていた。
術師としての義務感から解放され、
私一人で責任を強く感じる必要はなかったと自分を許せるようになった。
「さあ急ごう。なまえの話だと都会より田舎のいじめの方が質が悪いっていうからね」
「こうしちゃいらんない。向こうに着いたら連絡するね」
「お土産は甘いもんでよろしく」
悟は名残惜しそうになまえの唇にキスを落とし、私となまえは飛行機に乗って北海道へ降り立つ。
汽車とバスを乗り継いで到着すると四月とは思えない寒さで、吐く息が白くなった。
「わあ…田舎は空気が美味しいね」
「久しぶりの遠出だしね。寒くない?」