第46章 夏油傑 親友の彼女-玖-
一人称をなおしてもまだ口が悪いのはもったいないが、悟は先導者としての一歩を確実に踏み出している。
「傑」
「わかってるさ。なまえに無茶はさせない。この命に代えても」
「お前もな。つーかそれで迷惑かけた前科あんだから
ちったあ自覚しろよ」
「ははっ、それを言わないでくれよ」
悟に話すと決めたが、言葉にするのに時間がかかった。
そんな時、悟から未来について考える話を振ってきた。
今までの私なら頑なに思想が偏った未来を口にするところだが、これまでの気持ちを正直に話すべきか迷った。
完璧に取り繕ってきたはずの偶像。
理想的な自分のイメージを壊すことへの恐怖。
その瞬間、なまえの口から伝わっているとはいえ、改めて自分の口から伝える大切さを知った。
悟は親友であり最高のライバルだった。
けれど悟が覚醒したあの日、私達は対等と呼べる最強ではなくなり、線引きされた気持ちになった。
口を開けばみじめな自分をさらけ出す。
けれどなまえに話したことは紛れもない真実で、彼女を嘘つきにさせたくなかった。
悟は理解してくれなくても否定も肯定もせず受け入れ「お前はどうしたい?」と問いかけた。
私の願いは、仲間の屍の山を見たくなかった。
だから「術師の未来を守りたい」と答えると「じゃあ一緒に変革起こすか」と悟は不敵に笑った。