第46章 夏油傑 親友の彼女-玖-
高専を卒業する年になまえは悟の子を身ごもり結婚した。
神前式は親族一同とごく限られた友人のみで行われ、白に統一された花嫁衣裳に身を包むなまえは目を奪われるほど美しく、つい見惚れて声も出なくなった。
隣に並ぶ悟は見違えるほど優雅な立ち振る舞いをし、黙っていれば彫刻のように美しく、その見惚れる佇まいから生涯を誓う覚悟を見せつけられている気がした。
並んだところをみるとやはり二人はお似合いだ。
こうなることを受け入れたはずなのに、どこか儚い気持ちにもなり胸の奥がぐっと締め上がるのを感じる。
「傑!おまたせっ!」
「あれ。荷物そんなものでいいのかい?」
「このバッグにおさめるって決めてたの。
厳選してたら時間掛かっちゃった」
私達は仲間が欠けることなく高専を無事卒業し、私は高専に残るのではなくフリーの術師としての道を選んだ。
今日はなまえと初の長い旅路となる日を迎えている。
「一ヶ月もしないうちにどうせ帰ってくるんだろ?
僕なら多いくらいだけどね」
見送りにきた悟は終始不満げな様子で、
寂しさを紛らわすようになまえに刺々しい言葉を投げている。
「お腹の赤ちゃんのこともあるしちょこちょこ帰ってくるよ。その間、悟は先生になれるようにがんばってね」
「学長が脳筋だからな。一ヶ月もありゃ余裕だし」
悟は高専教師を目指し、硝子は医師免許を取得して高専専属の医師になると決めた。