第43章 夏油傑 親友の彼女-陸-
話したくて話したくて、やっと話せたと思ったら悟から言われたんだ。
あの時「呪術師に恋愛する暇なんてないよ」といった
無自覚なフリをした自分を心の底から呪いたい。
悟はきっとわかっていたんだ。
わかった上で私に聞いてきたんだ。
だけど私は素直に好きだと言えず、後から勝手に後悔している臆病で卑怯者。
あの時、ハッキリ宣戦布告しておけば悟ともう少し素直に話せていたかもしれないのに。
「なまえ…」
「ん?」
「君と幸せになりたいよ…」
言うべき言葉ではないのはわかっている。
悟から奪う気も壊す気もないクセに…
彼女を困らせるだけなのに…
自分の幸せを望もうとすると大切な二人を不幸にさせてしまう。
なにより中途半端な自分がひどく許せなかった。
負けた自分が恥ずかしかった。
理想の自分になれなくて情けなかった。
意味のない殺しはするなとあの時悟に言ったクセに、全ての責任を負って自分も死ねば…
そんな馬鹿げた妄想をするようになってしまった。
「すまない…。今のは聞かなかったことにしてくれ…」
本当に最低なクズだ。
堕ちるなら一人で行けよと悟から言われそうだ。
なまえを巻き込む必要なんてない。
けれど、壊れていく私を救えるのはなまえだけなんだ。