第39章 夏油傑 親友の彼女-弐-
「つい二ヶ月前にわたしが言った台詞だね。
思い知ったか」
「ははっ、ホントだね。…ごめんね。
君には誰よりも格好いい男だと思ってほしかったんだ」
社会の秩序を守るため、
この生まれ持った強い呪力は多少キツくても強者である責任を果たすべき指針として弱者を守るために使うと決めた。
これまで順調だった日々も、あの日を境に何が正義なのか、何を守るべきなのかわからなくなっていった。
守れなかった命。
無惨な大敗。
弱者からの後味の悪い拍手。
担任や仲間からも励まされ、
隣の部屋からなまえの泣く声を耳にし
言い表せない孤独感に襲われた。
翌日なまえに声を掛けられたが
心配されたくない私はとっさに「何でもないよ」「大丈夫」と誰に対しても同じ態度を取ることを選んだ。
その言葉は一線を引く意味を知っていながら使い、
気持ちの安定は自分で何とかすべきだと言い聞かせる意味を込めて強がった。
休む暇もなく悟はどんどん前を向いて進み、
その「大丈夫」の言葉がいつしか現実になるように
私は必然的に一人になった。
「…傑はいつだって格好良いよ。完璧で優しいところも傑の良いところだけど…放っておけないよ」
誰もわかってくれなくていい。
生きづらい選択をしたのは私自身の問題だ。
そう思っていたのに…なまえは私を一人にさせてくれなかった。
真っすぐに見詰める君の瞳には私のやせ我慢などすべてお見通しだったみたいに。