第38章 夏油傑 親友の彼女-壱-
しかし、ぬか喜びするのはまだ早い。
一瞬でも私の裸を想像してくれるのは嬉しいが
なまえが承諾しないことには目を閉じていた夢と同じ。
「あー、やっと終わったぁ。傑、お疲れさま」
「お疲れさま。今日は先にお風呂に入る?」
「ううん。後にする」
夏の季節は特に忙しく、なまえの性格からしても近場の宿やホテルに泊まることが多かった。
移動だけでも疲労するし、渋滞に巻き込まれた時は呪術規定に背くだろうが補助監督を置き去りにして呪霊に乗って急行することもあった。
それなのに担任からたまにチクッと言われて癪に障るが、背に腹は代えられない。
人々の心の平穏を守るのが最重要事項なのだ。
「傑。アイス食べる?」
「もうお腹いっぱいなの?」
「欲しそうに見てるから」
はじめは別々の部屋だった。
たまたま空室がないと困っている旅行客を見かけ、
人助けをきっかけに一緒の部屋で過ごすようになった。
なまえはいい意味で周りを気にしない。
悟の彼女だというのに軽やかで甘え上手で、ベッドを挟んで会話していたのにいつの間にか同じベッドで横たわるようになって同じアイスクリームを口にする。
悟はこのことを知ってて頼んできたのだろうか。
「…私ね、悟と最後までやりたいのに…できないの」