第33章 七海健人 夫婦交換しよ?-壱-
付き合っていたあの頃みたいに少しでも取り戻したくて
浅ましい考えから夫婦交換を承諾してしまった。
「…きっと取り戻せますよ。
夫婦は愛し合って結婚するものなんですから」
健人さんと同じ恋愛の価値観で嬉しくなる。
陽とは勢い…なんとなく…
そこから始まった結婚生活ではなかった。
だけど結婚してからというもの感情がすれ違っていく。
わたしはいつまでもラブラブな夫婦でいたかったのに
陽はゲームをしながら適当に話を受け流す。
「飲めますね。もう一本空けますか?」
「おねがいしますっ…!」
気持ちよく酔って頭がふわふわしていると
そっと寄り添うように
固くて筋肉がありそうな体が密着し、
嗅いだことのない香りに気付いて本能的に意識し始める。
「…健人…さん…?」
「少し飲み過ぎましたね。具合はどうですか…?」
こんな風に抱き寄せられているなんて久しぶり。
ずっとこのまま寄り添ってもらいたい…
離れたくないと思っている浅ましい自分がいる。
「なまえさん…?」
…どうしたらもっと触れてくれるんだろう。