第33章 七海健人 夫婦交換しよ?-壱-
「どうぞ」
「あ…いただきます…」
勧められるがまま私好みのお酒を注いでもらう。
静先輩は赤ワインが好きだし、
先ほどの言葉を思い返しても健人さんは事前に計画を知っていると判断する。
「まずは状況を整理しましょう。
夫婦別々の部屋に入ったということはあの話も?」
「はい…。わたしたち夫婦はレス状態で…
先輩のおうちはその…、タフ…だと聞いて…」
「それで夫婦交換を承諾したと。
けれども私が認知しているとは思わなかった」
「はい…」
「やり方が汚い。まあ妻らしいといえば妻らしいが…」
自分から乗った船なのに責められている気分だ。
今はただ状況整理をしているだけなのに
後ろめたさで後ろ髪を引っ張られてハゲる気がする。
「今まで旅行なんてしなかったですし、
いくら可愛がっている後輩だからとはいえ
一緒に行くのは不自然だと問い質したんです。
…あなたが承諾したとはいえ、
私達夫婦の問題に巻き込んでしまい申し訳ない」
「あっいえ…わたしの方こそ。
陽の気持ちを取り戻せるならと出過ぎた真似を…」
夫婦交換で陽の枯れた気持ちを復活させたかった。
ゲームよりもわたしを見て嫉妬してほしい。